概要

劇団夢宇人さんのいろはに金平糖を観てきたので感想を書きます。ネタバレあります

観劇日 2022/07/10
場所 金沢市民芸術村PIT2ドラマ工房

あらすじ

前に夫を亡くした千恵子は、認知症が進みヘルパーの力を借りて暮らしていた。
少しずつひとり暮らしがままならなくなっていく中、彼女の財産をめぐり周囲が浮き足だつ。そこへ、千恵子の養女だと言う女が現れた・・・。

役者について

認知症の千恵子を中心にして、複数の人間の思惑や複雑な心情の交錯が描かれているのだけど、それぞれの立ち位置がわかりやすく表現されていて、見た目や演技の方向性からもそのキャラクターを容易に想像できる作りとなっていた

パンフをなくしてしまったのでほぼ役名を思い出せないのだけれど、林美智江さんと林裕之さんはとても息の合ったコンビで、夢宇人さんの公演には欠かせない役者だと思った。あと、あたしンちという漫画を舞台化するなら夢宇人さんしかないと思った

千恵子役の今村さんはとても役にはまっている感じで、セリフはそこまで多くはないが存在感があり、話の中心としての役割を上手に果たしていた

みついさんは天海祐希に演技が似ていると思った。難しい場面の長いセリフも難なくこなし、コメディタッチの場面もやってのける器用さを兼ね備えている。芝居の中盤から登場し、少し中だるみしそうな雰囲気にハリを与えていたように感じた

信用金庫?勤めの娘と新しいヘルパーさんはどちらも初々しい感じで、若干真面目と言うか演技が固い感じがした。娘役の衣装がどんどん変わるのが面白かった。新しいヘルパーさんは声が特徴的で他の役も見てみたいと思った

叔母さんも結構重要な役どころで、前半の普通の雰囲気から後半の妊娠のくだりにかかる演技の変化がとても良かった

大阪から来た夫はキャラクターのイメージを見た目、喋り方、所作で表していてとても分かりやすかった。あと、セリフが聞き取りやすかった気がする

最初のヘルパーさんとケアマネさんは、物語の冒頭をしっかりとこなして、なんか本当にいても不思議じゃないなと思った。そして、その雰囲気が観客をあの空間にすんなり導いたように思う。ケアマネさんの声が若干細い気もしたけど、逆にそれがほかの役者とのギャップになって、役者の色にバリエーションが生まれていたようにも感じた

照明・音響について

音響はどちらかと言えば控えめで、あまりストーリーの邪魔をしない感じなのが良かった。ただ、暗転が多いので、できればブリッジにかかる音でもう少し役者の動く音を消してくれていたら良かったなぁと思った

照明は、舞台を場面ごとにうまく二つに分けていて、とても見やすかった。現代劇で派手な照明と言う感じもないけど、最後のシーンはとてもいい雰囲気を醸していたように思う

ストーリーについて

ちよっと前に見た、東西本線さんの「鬼より怖い」と結構似ていて、(現実は知らないけど)もしかすると認知症と遺産って結構ある話なのかなって思った。それもあって、なんか頑張って遺産を貰いたいみたいな展開は少し既視感があり、話としては面白いはずなのに驚きが少なかった。

数え歌がだんだんと思い出せなくなるという作りが認知症の状態を表していて、物語の中にタイトルやテーマがうまく織り込まれていたと思う。ただ、最初の方で新しいヘルパーさんが金平糖持っているのはちょっと不思議な気もした

前半の導入部分で、ストーリー的には状況の説明と、登場人物の紹介をしていくんだけど、結構言わなければならない情報が多いので、物語が進むというよりは人が出てきて説明していくという時間が長く、少し引っ掛かりみたいなものが欲しいと感じた。家の状況、認知症のこと、親戚関係、登場人物の職業などなど、もちろん提示しなければならない情報なのは間違いないのだけど、自然な流れの中で提示されていたかと言うとちょっと気になるところもあった。ほぼ全員が知り合いという状況でわざわざ人物を紹介させるのって難しいと思う

中盤以降は養子に入りたいという話から、みついさんの登場、喧嘩、妊娠、たこ焼き屋などなど、話を動かす要素が出てきて興味を惹かれる展開となったので良かった

これは夢宇人さんのカラーでもあると思うけど、基本的にすべての要素・課題をうまく解決して、良い話で丸く収めるという形になっている。そのため、終盤では全ての人に結論がある程度用意され、少しずつフォーカスが当たる。話としてとても丁寧に作られている反面、若干冗長に感じたりもした。最終シーンの温泉卓球のやり取りは必要だったのだろうか……

その他

吉村さんの前説が緊張感をほぐしてくれてよかった

以上です